昨年、大阪・堺市で、17歳の男子生徒が全身麻酔を使った歯の治療中に、低酸素状態になり、残念ながら亡くなるという悲しい事故が起きました。警察の調査によると、酸素を送るチューブが正しく挿入されていなかったことが原因で、担当の医師2人が過失致死の疑いで書類送検されました。この事故は、全身麻酔の治療における慎重な管理の重要性を改めて教えてくれます。
特に、障害のある方に全身麻酔を使う歯科治療は、一般の治療よりもリスクが高くなります。なぜなら、術前の検査が難しかったり、手術中に呼吸のためのチューブと治療を行う場所が近いため、さらに注意が必要だからです。このため、麻酔の専門医がしっかりと管理することが不可欠です。
しかし、熊本市内で全身麻酔を使った歯科手術を行える病院は限られています。熊本大学病院、伊東口腔病院、熊本市民病院、鶴田病院などがその施設にあたります。特に天草地域では、当院が唯一全身麻酔下での歯科治療に対応しており、年間48件の手術を行っています。そのうち、10件は障害者の治療です。
全身麻酔を使った治療では、手術中だけでなく、術後のケアも非常に大切です。特に、麻酔から目を覚ます過程や呼吸の管理には高度な技術と経験が必要です。医療事故を防ぎ、安全に治療を行うためには、医師や看護師など医療スタッフ同士の連携が欠かせません。
私たちは、歯科医師会や地域の医療機関と協力し、すべての患者さんが安心して治療を受けられるよう努めています。特に、リスクの高い治療では、一人ひとりに最適な医療を提供することを目指しています。
これからも患者さんの安全を最優先に考え、地域医療に貢献していきたいと思います。安心して治療を受けていただくために、私たちは日々努力を続けていきたいと考えております。
歯科口腔外科 田中拓也