院長 芳賀克夫
昨日、新型コロナウィルス感染症の治療薬であるゾコーバという薬が厚生労働省から緊急承認されました。この薬の評価は専門家により分かれているところですが、私はこの薬がコロナ禍を大きく変える突破口になるのではないかと考えています。最初に申しますが、私は製薬企業から、謝金や研究費などの資金は一切受けていません。 この薬の利点は、誰にでも投与できるということです。今までも新型コロナウィルスを排除する薬はありましたが、対象はすべて高齢者や持病がある人など一部の患者さんに限られています。言うならば、新型コロナウィルス感染症の患者5人の中で1人の患者しか抗ウィルス薬は投与されていません(図1)。この治療戦略で新型コロナウィルス感染症の死亡率は著明に下がりました。しかし、問題は抗ウィルス薬を投与されていない残りの4人の患者さんたちです。この人たちの多くは治療を受けなくても自然に治っていきます。しかし、この患者さんたちが治るのには平均で8日間かかり、その間ウィルスを排出し、周囲の人に感染を拡げていくのです。新型コロナウィルスの感染力はとても強く、インフルエンザの比ではありません。このような理由で、毎年感染の波が訪れているのです。 今回承認されたゾコーバは、これまでの抗ウィルス薬と違って、重症化リスクのない患者さんにも投与できます。3日間内服するとウィルス量は30分の1以下になります。これにより、感染の連鎖を止めることができるでしょう。そうなれば、感染の波も小さなものとなるでしょう。 我々が経験しているパンデミックは、ある意味戦争のようなものです。長く苦しい時期が続きますが、新しい武器を得たことで収束に向かうことを祈っています。 令和4年11月23日