第7回緊急輸血シミュレーション訓練を実施しました

 産科危機的出血は、妊産婦の約250人に1人の頻度で発生するとされ、医療の進歩により減少しているものの、依然として妊産婦死亡の原因の第一位となっています。原因として弛緩出血や産道損傷、癒着胎盤、羊水塞栓症などがあり、急速にDICに至ることが特徴です。予測が困難なことが多く、かつ大量出血になりやすいため、その対応については平時より訓練を行なっておく必要があります。産科危機的出血対応については、日本産婦人科学会をはじめとする諸学会が合同で「産科危機的出血への対応指針」を発表していますが、それをもとに天草地域の地域性を考慮した対応を行う必要があり、訓練が欠かせないところです。
 当院では2018年より産科危機的出血に備え、年に一回緊急輸血シミュレーション訓練を実施し、産科救急疾患が発生した場合に病院全体でどのように動いていくかを確認しております。今回は大量出血をきたした妊婦さんに対し、初期対応から緊急帝王切開術に至るまでの対応についてシミュレーション訓練を行い、当院の医師や助産師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、事務方スタッフが訓練に参加しました。実際に訓練を行うと日頃の訓練の成果を感じる一方で、より良くできる部分も洗い出されました。産婦人科としても緊急時に指示を適切にかつ的確に伝達することの難しさを実感し、院内で共有できました。訓練後の振り返りでは医師以外の職種からも多くの意見があがり、病院全体の意思疎通ができました。
 妊娠出産が誰にとっても幸せなものになることを願う一方で、突然に発生する母体と胎児の緊急事態に対し病院全体が一丸となって救命する体制を日頃から整えておけるよう、これからも訓練を続けて参ります。

産婦人科 小林克