「喘息・COPDのトリプル吸入療法」
内科医長 小松太陽
気管支喘息およびCOPD(慢性閉塞性肺疾患)に対する吸入治療薬として、吸入ステロイド薬(ICS)、長時間作用型β2刺激薬(LABA)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)の3本柱がございます。これまでICS/LABA、LABA/LAMAの組み合わせの2成分合剤が販売されておりましたが、重症例においては3種類とも必要なケースもあり、その際にはICS/LABA+LAMAあるいはLABA/LAMA+ICSというように、2つの吸入薬を併用するしかありませんでした。しかし最近になり、ついにICS/LABA/LAMAの3成分合剤(トリプル吸入薬)が発売されましたので、ご紹介致します。
まずはCOPDを適応として2019年3月にテリルジー、同年6月にビレーズトリが承認され、2020年6月には気管支喘息を適応(世界初)とするエナジアが承認されました。これらのトリプル吸入薬の最大のメリットは、それまで2つの吸入薬を併用する必要があった患者さんがたった1つで済ませられることによる、満足度・アドヒアランスの向上であると考えます。それまでの吸入薬の組み合わせ次第ではトリプル吸入薬によって経済的負担を減らすことも可能です。
トリプル吸入薬の最もよい適応になるのは、喘息およびCOPD患者のそれぞれ30%程度存在するといわれている、 「喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:. ACO)」患者さんと考えられます。しかしACO以外の喘息、COPD患者さんでも、ICS/LABAやLABA/LAMAでコントロール不十分である場合の治療ステップアップとしても考慮されます。
未治療症例に最初からトリプル吸入薬を開始すべきなのか、また現行販売されている3剤を患者さん毎にどう選択するか、などまだ議論の余地はございますが、これからの喘息・COPD治療においてトリプル吸入薬の出現は、一つのターニングポイントになり得ると考えます。
喘息・COPD治療で何かお困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談頂けましたら幸いです。
商品名 | エナジア | テリルジー | ビレーズトリ |
会社名 | ノバルティス | GSK | アストラゼネカ |
製剤写真 | |||
適応 | 気管支喘息 | COPD | COPD |
用法用量 | 1回1カプセル 1日1回吸入 | 1回1吸入 1日1回吸入 | 1回2吸入 1日2回吸入 |
デバイス [剤型] |
ブリーズヘラー [ドライパウダー(DPI)] |
エリプタ [ドライパウダー(DPI)] |
エアロスフィア [加圧式定量噴霧式エアゾール製剤(pMDI)] |