第5回緊急輸血シミュレーション訓練を実施しました

産婦人科 神尾未紗希

生命を脅かすような分娩時あるいは分娩後の大量出血は、妊産婦300人に約1人の頻度で発生し、その多くは分娩前の予測が困難です。また、産科出血は、一般手術などの出血と比較して急速に全身状態の悪化を招きやすく、中等量の出血でも容易にDIC(播種性血管内凝固症候群)を併発することから、輸液と赤血球輸血のみでは希釈性の凝固因子低下を招きDICに伴う出血傾向を助長させます。このため、直ちに赤血球輸血を開始することが必要ですが、産科出血の特徴を考慮し、赤血球と同量程度のFFP(新鮮凍結血漿)の投与も重要とされています。
今回、2022年9月5日に第5回緊急輸血シミュレーション訓練を実施しましたのでご報告致します。本年度も、常位胎盤早期剥離による大量出血で搬送されてくる妊婦さんを想定した内容に加え、COVID-19の流行が未だ収束しない時世でもあることから、患者さんがCOVID-19感染者である可能性を考慮し、搬送ルートや医療スタッフの対応の再確認を行いました。実際の現場を想定して迅速に輸血製剤を準備し、投与を開始することができましたが、医療スタッフ間での連絡漏れや新たな課題なども見つかり、対応を再確認するきっかけになりました。また、感染対策をしながら産科出血の対応をすることの難しさを改めて痛感しました。
本訓練は2018年から毎年実施されていますが、実際に本訓練が臨床現場で活かされた症例もあります。今後もより安全な医療を提供できるよう、今回の輸血シミュレーションを振り返り、改良していきたいと思います。

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