最新医学シリーズ ~ 6 ~腫瘍内科でのがん治療

天草中央総合病院 腫瘍内科 熊野御堂慧

 2018年4月から天草中央総合病院に赴任して5年が経ちました。これまで頭頸部癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、大腸癌、膵癌、胆嚢癌、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、緩和ケアを中心に医療を行ってまいりました。(外科で乳癌、産婦人科で婦人科癌、呼吸器内科で肺癌の治療も行っています。)

5年前と現在を比較すると免疫療法(ニボルマブ アテゾリズマブ デュルバルマブ ペムブロリズマブ イピリムマブ等)の適応が拡大され、免疫療法単剤、免疫療法+免疫療法、免疫療法+化学療法、免疫療法による術前術後化学療法をできる癌が年々増えてきており、癌のガイドラインの更新が2年に1回では間に合わないようになってきています。今後は免疫療法がないがん治療はなくなっていくのではないかと考えています。

現在、最も多く紹介される固形腫瘍は膵癌です。残念ながら膵癌は免疫療法が適応となっていない癌の1つです。治療としてはmFOLFIRINOX、nab-PTX+GEM療法の2つの治療を行います。75歳以上の方にはmFOLFINOX療法は難しいため、nal-IRI+5FU療法やTS-1療法を行っています。切除不能膵癌の50%生存期間はGEMしか治療選択肢がなかったころは半年でしたが、現在は約2年まで伸びています。また、BRCA遺伝子変異がある膵癌患者ではオラパリブが使用できるようになっており、当院でも2例ほど使用しました。

免疫療法の効果予測となるPDL1検査(CPS TPS)、固形腫瘍では癌パネルの検査、免疫療法が適応とならない固形癌ではMSI検査、膵癌ではBRCA、大腸癌ではRAS、BRAF、イリノテカンを使用する化学療法前にはUGT1A1遺伝子検査など、癌種に応じて治療開始時もしくは治療中に行うべき検査が増加しており、徐々に個別化治療ができる時代になってきていることを実感します。

最近はコロナウイルス感染拡大も落ち着いてきており、2023年からは緩和患者の外来、入院を増やしていきたいと考えています。現在は放射線照射、他職種による緩和回診、訪問看護や訪問診療(水曜日)なども行っています。2022年4月からは緩和専門医である松本衣里医師(松本内科眼科医院勤務)が月曜午前中の外来を担当しており、癌による痛みだけではなく、精神的なつらさやスピリチュアルペインに対しても対応できるようになりました。緩和外来希望者は松本先生(月曜日外来)、訪問診療や入院加療を希望される方は熊野御堂(月・木曜日外来)にご紹介いただけると幸いです。

天草在住の方が天草でも熊本市内と同等の治療を受けられるようにすることを目標として、これからも尽力して参ります。